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第4回「近松賞」選考結果
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| 第4回「近松賞」は2007(平成19)年5月1日から6月30日の締切までに、海外3カ国ほか全国32都道府県から215作品の応募がありました。1次審査で37作品、続く2次審査で最終候補作品として10作品を選出し、12月20日(木)午後7時から5名の選考委員による選考委員会を東京で行った結果、近松賞を決定しました。 受賞作品には、2008(平成20)年1月28日(月)に行われる表彰式で、正賞ブロンズ像と副賞300万円(出版権料、上演料、税含)が贈呈されます。また、3月に選評を掲載した冊子を発行、2011(平成23)年6月に上演を行う予定です。 |
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尼崎の北の突き当たりの市営団地。傍には武庫川から水を引く水路がある。 ドブのような水路にもその時期には数匹の蛍が舞うという。 6月の日暮れ。団地に住む平凡な妻、井上晴子が消えた。 夕方帰宅した夫、勉に「蛍を見に行ってみたい」と言っていた晴子。 その矢先、勉が数十分外出した隙の出来事だ。勉には思い当たるふしがない。 同日午前中、近所のコンビニには女の強盗が入ったらしい。 30万を奪って逃げた。新聞が報じていた特徴は晴子と似ていた。 一週間後。 勉は何も手につかず会社も無断欠勤している。 そこへ突然、かつて同じ団地にいた鈴子が十数年ぶりに訪れる。 晴子との約束を果たしに来たという。約束の詳細は明かそうとしない。 鈴子は勉に晴子への包みを托す。「決して中を見ないように」と。 その時、玄関のチャイムが鳴った。何故か身を隠す鈴子。 チャイムの主は真向の棟に住む林の妻だった。 生協が同じ班なので、先週晴子が注文した品を届けに来たという。 林の妻の来訪後、動揺を隠しきれず立ち去ろうとする鈴子。 引き止める勉は、托された包みの封を破る。 出てきたのは30万円――。 以前、鈴子は阪神尼崎でふいに晴子と会ったのだという。 晴子は知らぬ男といたという。その時に鈴子は晴子から30万借りたという。 まるで男との仲への口封じのように晴子から渡されたのだという。 そして今、鈴子の持参した30万と先週のコンビニ強盗の30万が重なる。 その時、再び林の妻が来て、例の事件のコンビニの袋に入ったパンを大量に勉に渡す。 林の妻はそこでパートしているらしい。 思い詰めたような林の妻は、晴子不在の部屋を見つめ涙を落とす。 林の夫も先週、突如消えたという――。 縫製の内職をしていた晴子のミシンからは、林家の窓が見える。 林の夫の書斎に点る灯までよく見える。 晴子のミシン机の灯も毎夜点っていた。 そのふたつはまるで呼応する蛍の光である――。 |
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現在岡山在住なので、岡山市から応募しましたが、私は尼崎出身です。 嬉しすぎます。故郷の栄えある戯曲賞を戴けるなんて! 自信などありませんでした。葛藤のサナカにおりました。 もっと生活を、切実を描きたい、笑いたい、痛みたい。 そこに足らない自分の力にいつも失望していました。 結婚して尼崎を出ることを決め、荷物をまとめながら、この作品を書きました。 6月の、螢の時期でした。 尼(アマ)の、自分の身辺の、弱くて愛しいうずくまりを題材にして、始めました。 この作品を評価して頂けたことで、一歩、憧れの方向へ進めた気がします。 今回の素晴らしい賞は、故郷と私を結ぶ、演劇の運命の糸のように感じています。 選んで下さり、ありがとうございました。 これまで10年余りの演劇活動を支えて下さったたくさんの人や仲間に感謝します。 オマエは創作をやめるなやめるなといつもうるさく言うてくれる夫に感謝します。 これがゴールとなってしまわぬよう、地に足つけた劇作をスタートしたいです。 |
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岩松 了(劇作家、演出家、俳優、映画監督) 近松賞はスペクタクルなものだろうとの私の先入観をくつがえして“団地もの”の『螢の光』が受賞作に選ばれたことは意外でしたが、人間という存在のとらえどころのなさを描いて出色のこの作品が、この賞に新たな光を与えたように今では思えます。 受賞の角ひろみさん、おめでとうございます。賞金が大きいので、そこらへんにまどわされず、これからも地道に創作に励んで下さい。 栗山 民也(演出家) とにかく、読み進めていくうちに人物から細部の小道具までが、可笑しな日常の風景としてぐんぐんと見えてきました。そして、初夏のむっと汗ばむ温度や湿度までが伝わってきました。最終選考に残った十作品のなかでは、ゾクゾクするほどに屈折を続ける感情の描写が、劇を前へ前へと動かしていくのです。その流れにまんまと乗せられてしまったのでしょうか、ちょっと固ゆでのそうめんを食べたときのような、妙にさわやかな読後感でした。角ひろみさん、おめでとうございます。 別役 実(劇作家) 受賞作は我々の極く身近な日常における、不条理な対人関係のもたらす、奇妙な体験を描いたもので、「現代」の一端を見事に構造化した作品である。それぞれのディス・コミュニケーションを示すものとして「螢の光」を採りあげているのも、的確であり、同時に美しい。方言も、それぞれの生活観をにじみ出させるものとして、有効に使われている。 出来れば最後にもう一度、主の不在の部屋で点滅する「螢の光」を見てみたいが・・・。 水落 潔(演劇評論家) 「螢の光」は市営団地に住む小企業の営業マンの妻が突然姿を消したことから始まる物語である。夫には心当たりがない。しかしその後尋ねてきた人々の話でまったく知らなかった妻の姿が見えてくる。平凡な家庭を覆う倦怠、閉塞感にあえぐ現代人の鬱屈が描き出された作品で、私はムードに偏り過ぎた感を持ち別の作品を推したが受賞に異議はない。陰になっている事柄が人間の不気味さを巧みに浮き彫りにしている点を評価したい。 宮田 慶子(演出家) 物憂げで所在ないような夏の夕暮れの空気感を保ちながら、巨大団地の閉塞感と、妻の失踪にうろたえ立ち往生する主人公の心理とが、うまく絡み合って描かれた魅力的な作品である。あちこちに仕組まれた設定や小道具が実に有効的に全体を支えている。−7月7日七夕の日、ミシン、生協、ペットボトルの魔法の水、エアコン室外機のハチの巣、札束をくくる赤いミシン糸etc・・・。作品の持つ世界観がブレることなく、読む者を包み込んでくれる。 |
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